街を歩いて見つけた“物語の入口”──辻本恭介流創作の入り口について

街を歩いて見つけた“物語の入口”──辻本恭介流創作の入り口について

🎉小説

🖊️池ちゃん

皆さんこんにちは。池ちゃんこと辻本恭介です。三連休最終日、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。こちらは午前中は晴れていたのですが、お昼過ぎから土砂降りの雨が降っております。線状降水帯にならないか心配です。雷も鳴っていて凄い天気になっています。

さて、今回は「街を歩いて見つけた“物語の入口”」と題して記事を書いていきます。私は小説を普段書いているのですが、アイデアの源泉は色んなところにあるなと思っています。特に、街を歩いていて物語のインスピレーションをもらう事もあります。街を歩きながら物語を作り上げていく過程について説明出来ればと思います。

なぜ街歩きが“物語探し”になるのか

まず、街は情報の塊だと思っています。物語を書く際に必要なのは引き出しの多さです。引き出しを増やすという行為は物語を書く上で大切です。引き出しを増やすために街という情報は糧になってきます。私は運動も兼ねて近所を良く歩きます。何気ない風景を見ながら歩いていく訳ですが、その街を隅々まで注意しながら情報を頭にインプットしていきます。

街歩きは近所に留まりません。ちょっと遠出して都市部にも足を運びます。都市部は路地が味があっていいですね。野良猫が居ればパーフェクトです。過去路地裏のシーンを物語に含めたこともあります。最近は街の再開発も進み、味のある路地裏は減ってきましたが、それでも今も尚残っている古い路地裏はたまに見に行きます。

それと、近代的なビルもインスピレーションを湧かしてくれます。私の小説には面白い大手企業が沢山出てきます。壮大な物語を紡ぐ企業のビルをイメージしながら、街に聳え立つビルを眺めます。それだけでワクワクします。その建物で汗水垂らしながら働いている従業員をイメージしながら、架空の大手企業を想像していきます。

路地裏で出会った小さな物語

路地裏って物語の原点とも言えると思っています。殺伐としている人気のない路地裏で誰も知らない登場人物が生まれ、そこから物語が始まるという展開が見込めるからです。私の処女作「私が愛した人は秘密に満ちていました。」でも、アンダーグラウンドな人達が怪しいコミュニティを再開発が進んでいない街を占拠して街を作っているシーンがあります。そのシーンの最初が路地裏から始まっています。そのアンダーグラウンドな人達は後に物語に大きな影響を及ぼします。

このように、路地裏は物語がスタートする原点だと思っています。物語に面白い風穴を開ける存在であって欲しい。そう思える空間が路地裏です。そんな路地裏を大事にしている私にとって、新作を作る時は必ず路地裏を想像します。猫が居たり、お店のゴミ箱が乱雑に置かれたりと、そのような意外にも情報量が多い空間でもあります。そんな中から物語を紡ぐ”光る原石”を見つけるために、旅に出ます。

古い建物が語りかけてくる記憶の気配

昔の建物も私にとって重要な要素です。私は福岡に住んでいますが、飯塚市という内陸の街が福岡にはあります。古い炭鉱の街として栄えた歴史があり、味のある雑居ビルが多々残っています。昭和の雑居ビルは寂れた雰囲気があってとても好きです。私は音楽をやっていてライブハウスで演奏する事もあるのですが、過去演奏していたライブハウスは狭い雑居ビルの三階にあって、めちゃくちゃレトロな雰囲気があったのを今でも覚えています。

古い建物は存在しているだけで記憶を呼び覚ましてくれます。このビルも昔は綺麗で賑わいを見せていたんだろうな、と想像する事ができます。それがとても私にとっては心地の良い時間になります。想像するのにはお金はかかりまん。ただ、街を探索してそういう想いに耽る。とても大切な時間です。

人々の会話や仕草に見えるドラマの断片

華金という言葉がありますよね。金曜日に呑みに出て、色んな話をする時間があるかと思います。私はお酒は飲みませんが、居酒屋からぞろぞろと出てくるサラリーマンや大学生を見ると「人生楽しんでていいな」と思います。そういう人達の会話や仕草は物語を作っていく上で参考になります。皆明日に向けて、来週の平日に向けて鬱憤を晴らしたり、情報共有をしているんだと思います。そういった人々の仕草は極めて人間臭くて私は好きです。

以前の記事でもお話しましたが、私は作品中によく居酒屋のシーンを出します。これは、居酒屋という空間が私にとって特別であるからです。居酒屋で話す事って結構重要な事も含まれていると思うんです。そういう断片をかき集めて人間たちの物語は進んでいく。そう考えると、居酒屋のシーンは必須になってきます。

そういった人々の会話や仕草は街中を出歩いている人々にあります。そういった人達の集まりも広義の意味では「街」であると言えます。街を形成するのは何も建物や道路だけではないという事です。そこに必死で生きている人間たちもまた、街の一部であると言えるでしょう。これは私なりの考え方になります。

日常を“物語の入口”に変えるための視点

最後に皆さんの中で物語を書いてみたいという人向けに文章を添えてこの記事は終わりにしたいと思います。日常を一眼レフで切り取るかのように、もっと周りの人々に注目を集めてみてください。スマートフォンを見ながら街中を歩くより、周りの生身の人間をもっと観察してみてください。そこにはインターネットには存在しない”リアル”な人々の生活があります。

リアルを追い求める事で必然的に作品もリアリティを帯びてきます。特に私が書いているような企業vs企業みたいな作品には毎日鼓舞しながら会社に出勤しているサラリーマンが必須です。そういった疲れを溜めながらも懸命に働いているサラリーマンに私は良くスポットライトを当てるように意識しています。皆さんも是非、街から──強いては人々から物語を作る”原石”を見つけてみてください。